近年、サイバー攻撃はますます巧妙化し、企業の情報資産を守ることが課題となっています。
特に、「内部は安全、外部は危険」という従来のセキュリティモデルが通用しなくなりつつあります。
この状況に対応するため、多くの企業が導入を検討しているのが「ゼロトラストセキュリティ」です。
従来のセキュリティモデルの限界
従来のセキュリティ対策は、会社のネットワーク境界の内側を「安全な領域」とみなし、
外部からの不正アクセスを防ぐことに重点を置いていました。
しかし、この考え方には限界があります。
• 境界内からの脅威: 会社のPCを借りた退職者が情報を持ち出したり、取引先を装ったメールの添付ファイルを開いてしまい、マルウェアに感染するといった内部からの脅威には無力です。
• リモートワークの普及: リモートワークが当たり前になった今、社員は自宅やカフェなど、会社のネットワーク外から業務を行うことが増えました。これにより、従来の境界型セキュリティでは守りきれない領域が広がっています。
「ゼロトラスト」の考え方とは?
ゼロトラストとは、「何も信頼しない(Never Trust)、常に検証する(Always Verify)」という考え方に基づいたセキュリティモデルです。
• すべての通信を検証する: ネットワークの内側・外側に関わらず、すべてのアクセスを疑い、IDやデバイスの健全性などを厳格に検証します。
• 最小特権の原則: 各ユーザーに必要最低限の権限のみを与え、機密情報へのアクセスを厳しく制限します。万が一、アカウントが乗っ取られたとしても、被害を最小限に抑えることができます。
Microsoftも警鐘を鳴らすサイバー脅威
Microsoftが発表した最新の「デジタル詐欺脅威レポート」でも、サイバー攻撃の巧妙化が指摘されています。特に、社員を標的としたフィッシング攻撃は、今も企業の大きな脅威です。
• サプライチェーン攻撃の増加: 大企業だけでなく、サプライヤーやパートナーといった関連企業を狙った攻撃が増えています。信頼関係がある企業を経由して、より大きなターゲットへ侵入を試みるのです。
• AIを活用した巧妙な詐欺: AIを活用して、あたかも社内の人間であるかのように振る舞い、社員から機密情報を引き出す詐欺も報告されています。
これらの脅威は、もはや「社内のネットワークに入れば安全」という神話を打ち砕いています。
ゼロトラストは、こうした新しい脅威に対応するための、まさに次世代のセキュリティ戦略なのです。
エンジニアが知っておくべきこと
ゼロトラストの実現は、システムやインフラの設計に深く関わってきます。
エンジニアとして、次の点を意識することが重要です。
• 多要素認証(MFA)を前提とした設計: ユーザー認証は、パスワードだけでなく、別の要素を組み合わせることを前提とします。アプリケーション開発においても、MFA導入を考慮した設計が必要です。
• APIやマイクロサービスのアクセス制御: サービス間の通信も、すべて信頼できるわけではありません。APIキーの管理を厳格に行い、必要最低限の権限のみを付与する最小特権の原則を徹底しましょう。
• ログの可視化と監視: 何か問題が発生した際、迅速に原因を特定するためには、すべての通信やアクセスログを収集・監視できる仕組みが不可欠です。
• セキュリティ意識の向上: 技術的な対策だけでなく、チームや組織全体でセキュリティ意識を高めることも重要です。開発者自身が最新の脅威トレンドや安全なコーディングプラクティスを学び続ける姿勢が求められます。
ゼロトラストは、現代のビジネスを守るための必須の考え方です。
この変化に対応し、日々の業務にセキュリティの視点を取り入れる事が必要ですね(^^♪